Q&A

「相続」とは、亡くなった方の財産法上の一切の権利及び義務を、特定の方が包括的に承継することを言います。また相続は人の死亡によって開始します。

相続人

死亡した人の財産法上の地位を承継する者のことを「相続人(そうぞくにん)」といいます。またこれに対して相続される財産、権利、法律関係の旧主体を「被相続人(ひそうぞくにん)」といいます。相続人は、相続開始前には「推定相続人」といい、被相続人が死亡し相続が開始することにより相続人が確定します。相続人には、被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹及び配偶者がなります。

相続の一般的効果

相続人は原則として被相続人の一切の財産、債務、権利義務を承継します。ただし以下のようなものは相続されません。

  • 被相続人の一身に専属する権利義務
  • 法律で死亡により権利義務が消滅すると規定されているもの
  • みなし相続財産と呼ばれる死亡保険金、死亡退職金、生命保険契約に関する権利、遺族年金等

相続の開始は、死亡の時点

相続は、人の死亡によって開始します。またこの他、失踪宣告により死亡とみなされることもあります。

相続開始の時期
通常 死亡の日
失踪宣告 普通失踪 不在者の生死が明らかでなくなってから7年間
特別失踪 危難が去ってから1年間

相続開始から相続税の申告・納付及び税務調査までの流れは、以下のとおりになります。相続税の申告期限は、相続開始の日から10ヶ月以内です。

相続税の申告スケジュール

金銭的に見積もることができる経済的価値のあるもの全てが相続税の課税対象となります(但し、相続税法等に定められた非課税財産を除きます。)。

相続税の課税対象となる財産

  • 相続・遺贈・死因贈与により取得した一切の財産(いわゆる本来の相続財産)
  • みなし相続財産(例えば死亡保険金や死亡退職金など)
    民法上は相続財産でないが、実質的に相続または遺贈により取得したのと同様の経済的利益を受けることから、相続税の課税対象となるもの
課税対象となる財産の具体例
種類 細目等
土地(借地権を含む) 田、畑、宅地、山林、その他の土地 など
家屋 家屋、構築物 など
事業用財産 機械器具、農機具、什器備品、売掛金、電話加入権 など
有価証券 株式、出資、公社債、証券投資信託・貸付信託の受益証券 など
現金・預貯金等 現金、預金、小切手、金銭信託 など
家庭用財産 家具、什器備品、自動車、門扉、塀、書画骨董 など
その他 生命保険金、退職金、立木、自動車、貸付金 など

相続税が非課税となる財産

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具 等
    一般の相続財産とは区別され非課税です。また香典にも相続税は課せられません。
  • 公益事業用資産
    宗教、慈善、学術など公益目的の事業を行う人が取得した財産で、公益事業に使われることが確実なものは非課税です。
  • 国等に寄附した財産
    相続財産のうち、相続税の申告期限までに国等に寄附をした場合は、その財産は非課税となります。
  • 生命保険金のうち一定額
  • 死亡保険金のうち一定額

法定相続分は、民法の規定により以下のとおりとなります。

1. 子と配偶者が相続人である場合
配偶者:1/2 子:1/2
2. 配偶者と親(直系尊属)が相続人である場合
配偶者:2/3 親:1/3
3. 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4

法定相続人の概要

配偶者は、常に相続人になります。配偶者以外の相続人は、次の順位になります。第1順位の子がいなければ、第2順位の両親になり、子供・両親がいなければ、第3順位の兄弟姉妹となります。

配偶者以外の相続人
順位 続柄 法定相続分
第1順位 1/2
第2順位 両親 1/3
第3順位 兄弟姉妹 1/4

養子も法定相続人になる

養子は養子縁組の日から養親の子となるため、養親の法定相続人になります。ただし相続税法上は養子の数に制限規定あるため、注意が必要です。

また相続開始の時点でまだ生まれていない子(胎児)にも、相続する権利があります。

婚姻外に生まれた子(非嫡出子)も認知により法定相続人になります。

一般的な遺言書の種類としては、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

自筆証書遺言 公正証書遺言
方式 個人で自筆により作成する遺言書 公証役場で作成する遺言書
作成方法 全文を自筆で作成する 公証人に遺言の内容を伝えて作成し、公証役場で保管してもらう
メリット 費用がかからず、他人に内容を知られない 様式不備や偽造のおそれがない。遺言書の開封に家庭裁判所の検認手続が不要
デメリット 内容や様式の不備、遺言書の偽造などのおそれがある。遺言書の開封に家庭裁判所の検認手続は不要 作成に手数料がかかる。証人が必要

遺言書を作成することが望ましいケース

下記の方は、遺言書を作成することが望ましいと考えられます。

  • 相続人の生活の安定を望む人
  • 円満な相続を願う人
  • オーナー経営者
  • 配偶者が既に亡くなっている人
  • 分割しにくい財産が大半を占める人
  • 子供のいない夫婦
  • 前妻の子供がいる人
  • 独身者や身寄りのない人
  • 第三者に財産を譲りたい人 など

相続人の相続期待利益の保護、生活保障などの点から、最低限取得できるものとして民法で保障される相続分のことです。

具体的な遺留分割合

法定相続人 法定相続分 遺留分
配偶者と子 配偶者 1/2 1/4
1/2 1/4
配偶者と両親 配偶者 2/3 1/3
両親 1/3 1/6
配偶者と兄弟姉妹 配偶者 3/4 1/2
兄弟姉妹 1/4 ゼロ
子のみ 1 1/2
配偶者のみ 1 1/2
両親のみ 1 1/3
兄弟姉妹のみ 1 ゼロ

遺留分減殺請求について

遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求をすることができます。

遺留分減殺請求は、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しないとき、または相続の開始時から10年を経過したときには消滅します。

税務調査の対象となる割合は、30%程度です。

税務調査とは

税務調査とは、相続税の申告後に申告漏れがないか否かを調査することです。

相続税の税務調査は、一般的に申告書を提出した年又は翌年の秋ごろに行われます。

通常の調査であれば、調査官は1人か2人です。事前に日程調整をしてから調査に来ますので、突然調査官が乗り込んでくるということはありません。

税務調査では何を調べられるか

被相続人の自宅に訪問して行われる調査は、概ね1~2日で終了します。しかし調査官は事前調査を十分に行い、ある程度の裏づけを掴んだ上で調査に訪れます。

税務調査の対象となった方のうち、およそ85%の方が何らかの申告漏れを指摘されています。

指摘事項の多くは、金融資産

わが国で相続財産に占める割合が最も大きい資産は、土地です。しかし税務調査における指摘事項が最も多い資産は、現金預貯金です。現金預貯金と有価証券を合わせた金融資産に対する指摘は、税務調査の指摘事項全体の50%を超えています。

土地は固定資産税台帳等で管理されているため、申告漏れなどの指摘は少ないのです。これに対し、現金預貯金等の金融資産は、相続人の認識不足から申告漏れを指摘されるケースが多いのです。

また最近では、海外に財産がある場合には、積極的に調査が実施されているようです。

税理士の役割

税務調査が入るということで、相続人の方々は不安になるものです。税理士はお客様と調査官の橋渡し役となり、お客様に安心して税務調査に臨んでいただきます。

名義だけ家族の名前を借りているが実質的には本人の預金であるものを名義預金と言います。

なぜ金融資産は、申告漏れが多いのか

相続人の方々は財産を隠蔽しようと考えているわけではなく、被相続人の財産であることを知らなかったというケースが多いのです。

一般的に相続財産として申告されていない財産には、以下のような財産があります。

  1. 相続人が自分のものと思っている財産
  2. 相続人名義であるが、被相続人が管理・運用していた財産
  3. 相続人が意図的に申告書に記載しない被相続人の財産

1、2の場合、相続人は自己の財産だと思っていても、税務署は被相続人の財産であるから相続財産に含めるべきと指摘を受けることがあります。

財産移転は適切に

名義預金か否かについての判定のポイントは次の通りです。

  • 相続人名義の通帳の原資は何か
  • 管理・運用は誰が行っているか
    • 印鑑はだれのものか
    • 通帳の保管場所
  • 過去の贈与税の申告の有無 など

生前贈与などにより財産を移転する場合には、将来相続税の税務調査で指摘されないためにも、適切に実行することが大切です。

贈与税は、生きている個人の財産をもらったときに、財産をもらった個人にかかります。

贈与は契約によって成立

贈与は、例えば親から子へ、祖父母から孫へ現金などの財産をあげることですが、贈与が成立するためには、あげる人が「あげますよ」という意思表示をし、もらう人が「はい、もらいます」という意思表示をする必要があります。つまり贈与は契約により成立します。

贈与税の計算方法

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の合計額から基礎控除額(110万円)を控除した残額に一定税率を乗じて計算します(暦年課税贈与)。

基礎控除額が110万円ですので、1年間にもらった財産の合計額が110万円以内なら贈与税はかからないことになります。

例えばAがBとCからそれぞれ100万円ずつもらった場合、Aは1年間に200万円をもらっていることになりますので、贈与税が課税されることになります。

贈与税の計算方法

相続時精算課税制度

贈与税の計算方法には、相続時精算課税という制度も存在します。こちらは65歳以上の親から20歳以上の子への贈与の場合に限り適用することができます。

相続時精算課税制度を適用すると、贈与により財産を取得しても2,500万円までは贈与税がかかりません。この制度は贈与者ごとに選択することができます(例えば父と長男の間の贈与は相続時精算課税制度を適用し、母と長男の間の贈与は暦年課税贈与を適用)。ただし一度相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者との間では二度と暦年課税贈与を適用することができなくなりますので、注意が必要です。

通常は贈与税がかかりません。

生活費や教育費には贈与税がかかりません

生活費や教育費に充てるために通常必要と認められる金額は、贈与税の課税対象となりません。したがって例えば親や祖父母が子や孫の教育費を負担したり、仕送りをしても贈与税はかかりません。

贈与税がかかるケースは?

しかし贈与した財産が生活費や教育費以外の目的に充てられた場合には贈与税がかかります。例えば生活費や教育費の名目で現金を受け取ったとしても、それで車の購入や株式投資などをした場合には、贈与税が課せられることになります。

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